箸の文化2

 7世紀の初めまでに日本に伝わった箸は、奈良~平安時代にかけて、庶民にまで普及していきます。そしてその後、伝来元の中国やその他の国とは違った独特の箸の文化が発達していきます。
そのひとつは、箸のみを使うという習慣です。
汁物を食べるときに中華料理ではレンゲを使用しますし、韓国料理ではご飯には匙を、おかずなどの副菜を取ったり、麺類を食べたりするときに箸を使うことが多いです。
中華料理や韓国料理では、原則として器を持ち上げない、それに対し、日本食では汁物など器を持ち上げて直接口をつけて飲んでもよい、というマナーとも関係しているでしょう。
次に自分専用の箸「マイ箸」も独自です。「マイフォーク」や「マイナイフ」を使っている国や地域はありませんし、中国や韓国でも各家庭に箸は常備されていますが、共用で使用者の区別はありません。
また日本では、男女別や子供用の箸が存在しますが、中国や韓国では全員同じ長さの箸を使います。男性と女性では手の大きさが違うので、手で持つ食器の大きさが違うのは当然のことだと思いますが、男女別や子供用の箸は世界でも希少な存在のようです。
ちなみに手の大きさに合う箸のサイズは「一咫半(ひとあたはん)」と言われています。
「一咫」とは親指と人差し指を直角に広げた長さのことで、一咫の1.5倍が「一咫半」です。一咫はおおむね本人の身長の1/10と等しいので、身長の15%が手の大きさに合う箸のサイズということになります。

 日本独自ではないですが、割り箸について少し触れます。割り箸は、江戸時代に使われるようになった「割りかけの箸」「引裂箸」と呼ばれた竹製の箸が日本での始まりとされています。江戸時代になって、そば屋や鰻屋などの外食産業が発達したことが背景にあります。割り箸は見方によっては、外食時のマイ箸であり、日本という国でこそ普及したのかもしれません。最近では、森林保護や使い捨てという面で環境によくないとも言われますが、間伐材や建築材料の端材を中心に作られていますし、リサイクルに取り組む動きも出ています。また外食用の「マイ箸」を携帯する人も増えていて、箸の文化も時代とともに少しづつ変化しています。

 一つの道具で「つまむ、はさむ、押さえる、すくう、裂く、のせる、はがす、支える、くるむ、切る、運ぶ、混ぜる」といった機能を果たせる箸とその文化は、その時代に合った考え方、使い方でこれからも受け継がれていくことでしょう。