ヤセたい人はよく噛んで

「痩せたい」「ダイエットしたい」という願望を持つ方は、相変わらずたくさんいらっしゃるようで、テレビやネットなど、巷では様々な情報があふれています。
これまでこのコラムでも、お口まわりとダイエットとの関連に何度か触れてきました。早食いは肥満につながるとか、よく噛むとダイエット効果が期待できるといったことです。今回は噛むこととダイエットの関連をもう一段掘り下げてみたいと思います。
 まず、噛むこと自体に注目します。噛むことは顔やあごのいろいろな筋肉を使った運動と言えます。噛めば噛むほど筋トレになり、余分な脂肪を燃焼させます。
体重に大きな影響はないかもしれませんが、引き締まったお顔の方が痩せて見えるでしょう。
 次の注目は食べたあとです。噛んですり潰されて呑み込まれた食べ物は胃や腸へ送られ、栄養素として体内に吸収され分解されます。
その分解の際、一部が体熱となって消費されます。ここで消費されるエネルギーを食事誘発性熱産生(DIT: Diet Induced Thermogenesis)と言います。食事をしたあと、身体が暖かくなるのはこの食事誘発性熱産生によるものです。平均すると摂取エネルギーの約10%が消費されます。
そしてよく噛んで食べる=噛む回数が増える、とこの食事誘発性熱産生も増加することが分かっています。よく噛むことで食べたあとにも、より多くのエネルギーが消費されるのです。普通に考えると「よく噛まないで呑み込むと固いままの食べ物が胃腸に入ってくるので、胃腸がたくさん動かなければならず、使われるエネルギーは増えるだろう」となりそうですが、実際は逆だったというわけです。
 そしてもうひとつ、よく噛むことによって食べすぎの防止効果も期待できます。人の満腹感は脳の視床下部にある満腹中枢が刺激されることで感じるものです。 食べることで血糖値が上がり、それが満腹中枢を刺激するのですが、これには15分から20分はかかります。よく噛んで時間をかけて食事をすれば、脳が満腹と感じるまでの時間差を埋めてくれ、食べすぎを防いでくれます。
 さらに、噛むことでノルアドレナリンというホルモンが分泌され交感神経を刺激し、それによって心拍数や呼吸数、血圧などがアップし脂肪細胞が燃焼され、肥満防止になります。

30回くらいを目安に、ゆっくりよく噛んで食べる習慣を身につけて願いをかなえましょう。