災害時の口腔ケア

 災害はいつどこで起こるかわかりません。地震、津波、台風や豪雨による風水害といった自然災害のほか、火災や大規模事故など、大きな災害が起きたときには、避難所生活を送らなければならないこともあります。
避難することで直接の命の危険からは身を守ることができますが、避難生活が長期化すると、健康を害する方が出てきます。その時大切になってくるのが、口腔ケアです。
 阪神淡路大震災では、震災関連死のうち約4分の1の方の死因が肺炎と報告されています。また、東日本大震災の時には、「歯・口・入れ歯の清掃がおろそかになり、特に高齢者では、誤嚥性肺炎などの呼吸器感染症を引き起こしやすくなる」との厚生労働省から注意喚起がありました。
 災害時には、水や口腔ケア用品の不足や、入れ歯を外したり歯磨きができる場所の確保等が難しい、などの理由で、口腔ケアは後回しになりがちです。
しかし口腔ケアを行って清潔に保つことで、風邪やインフルエンザ、肺炎の予防になりますし、加えて、支援物資のお菓子がいつでも食べられる避難所では、子どものむし歯が増えたり、歯周病が悪化して糖尿病の悪化を招いたという報告もあるので、口腔ケアは欠かせません。

水や口腔ケア用品の不足する避難所では、口腔ケアにも工夫が必要です。
●歯ブラシがないときは、
・食後に 30ml くらいの水やお茶でしっかりとうがいをする、
・濡らして固く絞ったタオル、ウェットティッシュなどで、歯の表面をこすってできるだけ汚れを落とす、などに取り組みましょう。
●水が不足しているときの歯みがきの方法は、
約30mlの水を用意 -> 水で歯ブラシをぬらして歯みがき -> 合い間にハブラシの汚れをティッシュでふきとる -> コップの水を少しずつお口に含み、2~3回にわけて、すすぐ、という手順になります。
●唾液を出すことも効果があります。
・歯ブラシで口を刺激すると唾液で湿ってくるので、その水分で汚れを落とす、
・唾液腺をマッサージして(耳の下、あごの下、ほほをさすったり、揉んだり、押したりして刺激する)唾液をたくさん出す、
・ガムを噛んで唾液を出す、などの方法があります。
 歯みがき剤の使用はうがいの回数が増えるので控えましょう。液体歯みがきや洗口剤があれば、水の代わりとなります(すすぎは不要)。

 日ごろの備えとして、防災グッズのなかに、歯ブラシなど口腔ケア用品を入れておくことをお奨めします。