思春期の口腔ケア


 口腔ケアについては、 子どものうちはムシ歯予防を中心に、おとなになったら歯周病予防として歯ぐきのケアに重点をおくとよいことは、皆さんご承知のことと思います。では、子どもとおとなの変わり目のいわゆる思春期は、どういった状態でどんなケアが必要でしょうか。

思春期の口腔ケア  最近では、こどもの成長も早いので、思春期というと、12,13歳から18,19歳くらいまでを指すことが多いようです。
まず思春期の前半の12~15歳についてはどうでしょう。
この時期、乳歯から永久歯への生え替わりが親知らずを除いてだいたい完了します。
 そして同時にこの時期は永久歯がもっとも多くむし歯になってしまう時期です。これは成長期になり食べる回数が増えることや、勉強が大変で夜の間食をすることが多くなったり、歯みがきも親に頼らず本人任せになり、ややおろそかになりがちなこと、などが主な原因だと言われています。
また一旦むし歯になってしまうと、この時期のまだ若い歯は進行が速いのも特徴です。歯は生えたあと、だ液の成分などで表面のエナメル質が徐々に硬くなっていきます。ですので、まだ若い歯は抵抗力が十分とは言えないのです。
自分自身が食生活や口腔ケアについて、意識を持つことが大切です。親として気になるようであれば、むし歯のリスクについて教えたり、一緒に考えたりする機会が必要かもしれません。

思春期後半になると、むし歯よりも歯肉炎のリスクが大きくなります。思春期性歯肉炎と言われ、前述の食生活の変化や乱れ、口腔ケアの問題に加え、ホルモンの不調和が原因となります。この時期、性ホルモンの分泌が活発になりますが、それらを栄養源として歯周病菌も増加するためです。この思春期性歯肉炎は、女性のほうが多くかかる傾向が見られます。思春期以前にも歯肉炎の傾向がある場合にリスクが高くなります。歯ぐきから血が出る、口臭がひどくなる、口の中がねばねばする などの症状が見られます。
この時期の歯肉炎でも、バランスの取れた食生活とプラークコントロールを中心とした正しい口腔ケアで、多くの場合症状は改善します。ホルモンのバランスが原因で重度の歯肉炎になってしまった場合には、ホルモンをコントロールするような治療が必要なこともあります。

多感な思春期は、人間の成長にとって極めて重要な時期ですが、歯にとってもやや難しい時期であり、大事な時期であることを心にとどめておいていただければ、と思います。